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治療者の個別の質問に具体的に答えるネットワークづくり

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1.背景と目的
 私が働く盲学校の職業課程には毎年2名の外国人生徒が入学します。彼らは3年間勉強して鍼灸あん摩の免許を取得します。そして帰国後は、マッサージの指導者となったり、治療院を開いたりします。
 盲学校教員の私と東京で鍼灸院セタニの院長をする妻は、帰国した外国人生徒達が知識や技能を向上させるために、継続的な支援をしました。

2.方法
 方法として3つのことを行いました。
  1つ目は、外国人生徒達が職業課程の2年生の時に、鍼灸院セタニで実習を行いました。
 2つ目は、私たちが外国人生徒の母国を訪問し、彼らと一緒に患者の治療をしたり、その国の盲学校であん摩の技術指導をしました。
 3つ目は、Skype等を使って、鍼灸院セタニの院長が外国人生徒の質問に具体的に答えました。

3.結果
 鍼灸院セタニでは、2011年から7カ国8名の外国人生徒が実習をしています。実習中、外国人生徒達は、色々な疾患の患者を治療しながら、技術的アドバイスやマナーのアドバイスを受けます。
 外国人生徒達の母国訪問は、2014年にモンゴルを訪問し、一人の外国人生徒と一緒に小児麻痺患者の治療をしました。2015年にはマレーシアを訪問し、あん摩のデモンストレーションをしました。
 Skype等の活用については、例えば、次のようなやりとりがありました。
 ○質問:患者は靴下をはいたような感覚障害があると訴えている。この症状に対する治療方法を教えてください。
 ○指導:多発性の末梢神経障害と考えられます。患者は糖尿病があるか確認してください。治療は足関節から膝関節に向けてマッサージをします。それから下肢に鍼を刺して通電して下さい。
 ○結果:数回の治療後、感覚障害は軽減した。

4.考察
 この活動には、段階的・継続的・意欲的に治療技術を向上させられる利点があります。
 外国人生徒達は、まず職業課程で教科書と授業で知識を得、教員達と人間関係を作ります。
 次に、学校外での実習で、教科書に書いてある症状や治療方法を実際の患者で確認し、院長との人間関係を作ります。
 そして帰国後は、教科書・授業・実習で得た知識、教員達・院長との人間関係を活用して、彼らが見たことのない症状を持つ新しい患者の治療方法を身につけます。
 彼らが新しい患者について質問する時、例えば「靴下をはいたような感覚障害」のように、教科書や授業で習った用語が入っています。教員達や院長は、この用語から患者に関係のある疾患や病態を推測し、適切な治療方法を指導します。
 このように、教員達・院長・外国人生徒達の人間関係があり、3者に共通する知識があれば、外国人生徒達は、新たに学習をする苦労がなく、今まで学習した知識や技術をただ思い出したり、組み合わせたり、応用するだけで、新しい患者の治療方法を身につけることができるのです。
 そして、個別の問題を解決すると、外国人生徒達は、もっと新しい患者を治療したい、新しい知識を得たいという意欲を持つようになります。